1-6. 遺伝子工学に利用される動物ウイルス
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1) ウイルスとは
ウイルス
光学顕微鏡では見えないくらいの小さな粒子(25~300 nm)、タンパク質の殻の内部に遺伝子を含む核酸をもつ
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生物は核酸としてDNAとRNAの両方をもつが、ウイルスがもつ核酸(便宜上ウイルスゲノムという)はDNAかRNAのどちらか一方のみ
DNAウイルス(e.g. ヘルペスウイルス)とRNAウイルス(e.g. インフルエンザウイルス)に大別できる
核酸の形態は一本鎖や二本鎖、線状や環状など多様
増殖方法は独自で、細胞に感染したウイルス粒子はいったん解体し、その後ウイルスゲノムの複製や遺伝子発現が起こる
細胞内にウイルスの各パーツができ、ウイルスタンパク質がウイルスゲノムを包み、たくさんのウイルス粒子が細胞を壊して外に出る
細胞は分裂によって増えるが、ウイルスはそのような増え方はしない
ウイルスはこのように細胞内の活性のある酵素や種々の分子を使って核酸の複製や遺伝子の発現を行う
つまりウイルスは生きた細胞内でしか増えることができない
感染する細胞/生物の種類により細菌ウイルス(バクテリオファージ)、植物ウイルス、動物ウイルスがある
2) ウイルスは厳密には生物とはいえない
ウイルスが自分と同じ多数の子ウイルスをつくるという現象は、生物の特徴である増殖や遺伝という性質に合致し、ウイルスは生物的側面をもつといえる
しかし、ウイルスは「生物は細胞からなる」という基準には当てはまらず、厳密に解釈するならばウイルスが生物であるとは言い難い
事実ウイルス核酸のみ(核酸は単なる物質)を細胞に接触させてもウイルスが増えてくる
つまりウイルスの本質は増殖性の核酸ということができる
ウイロイドという小型RNAは殻を持たず、植物細胞に感染して増え、植物に病気を起こす
3) 使用される主なウイルス
遺伝子工学ではウイルスゲノムに目的遺伝子を組込み、ウイルスの高い感染性を利用して細胞に遺伝子を導入する
哺乳類のDNAウイルスとしてはアデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどが汎用され、RNAウイルスとしてはレトロウイルスあるいはその亜種であるレンチウイルスが使われる
レトロウイルスのRNAゲノムは感染後DNAに逆転写され、それが細胞のゲノムに組み込まれる
タンパク質を大量に産生させる目的では昆虫のDNAウイルスであるバキュロウイルスが使われる
特殊な例として、細胞膜融合能のあるセンダイウイルス(RNAウイルスであるパラミクソウイルスの一種、HVJ)を細胞融合のツールとして使う実験法がある